昨日は夜から台風ということで、寄り道はせず早めに帰宅をして、なんとなく録画してあった「プロフェッショナル仕事の流儀」を観ました。
2015年2月16日(月)に放送された日本にコンシェルジュという仕事を築き上げたパイオニア・一流コンシェルジュ阿部佳さんの仕事の流儀。これがもうかっこよすぎて本当に痺れた…!心が震えた…!ので、その思いをブログに。
コンシェルジュという仕事
阿部さんは、六本木にあるグランドハイアットのコンシェルジュです。
阿部さんの朝は、寄り道から始まります。
通勤ルートをあえて決めずに近くのレストランやカフェなどを何か新しいものはないか何気なくチェックしながら出勤するそうです。
コンシェルジュという仕事は、あらゆることを聞かれるので、日々様々な情報をインプットする努力を重ねているのだろうなと思いました。
自らを活字中毒だと言うほどに読書量も半端じゃなくて本当にすごい。
わたしは、ホテルの専門学校に通っていたのですが、そこでは2ヵ月×3か所でのホテル実務研修がありました。
虎の門にある某ホテルでクロークに配属されたとき、クロークとはいえど受付のようなカウンターにいてエレベーター近くでのご案内なども業務もあるので、お客さまからあらゆることを聞かれる日々。
ホテル内のことはもちろん、近くのお店のこと、交通機関についてなど本当に色々。
未熟なわたしはその全てにその場で的確な対応をすることはできず、近くのコンシェルジュデスクにご案内することが多々ありました。
コンシェルジュは、ホテル内でわたしが1番憧れていたセクションです。
“言葉には出ない希望を探る”
阿部さんは、「できない。」とは言わない、社会的に問題がない限り依頼には絶対に答える、それがコンシェルジュの仕事だとおっしゃっていました。
いつも一筋縄でいくとは限らない、お客様の希望を叶えられないケースだってある、だけど阿部さんが本領発揮をするのはそこから。
どれだけ柔軟に相手に近づくか、考えてることやイメージしていることを読み解き、それに合った内容を提案する。
無理ですと謝ると同時に次の提案をする姿勢、アバウトな質問から投げかけていき相手の希望を探り、さらに相手の表情の変化を観察し言葉には出ない希望を探る。
“言葉には出ない希望を探る”というのは、接客の本質だなと思います。
何かを質問されたときに、それに答えるだけなら誰にでもできますが、お客さまがどうしてその質問をしたのか、その気持ちまでもを読み取ってベストな受け答えをするのが接客のプロだと思います。
例えば、明確にこうしたいという希望を持ってそれについて聞きに来るお客さまもいれば、お客さま自身もふわっとしたイメージのまま相談に来る方もいて、その場合はお客さまの持っているイメージを一緒に具体化していきベストな提案をする。
それがバッチリ噛み合ったときに、そこで初めてお客さまにご満足いただける。
接客以外の仕事でも同じことが言えると思います。
営業だってできる人は、お客さまにニーズを的確に汲み取ることができているはずだし、仕事以外でも人から好かれる人は、必ずそういったことができる人だと思います。
言葉で言うのは簡単だけれど、それをいつでも高いクオリティで提供できる人はそう居ないはずで、わたしには阿部さんが誰よりもかっこよく見えてテレビに釘づけになってしまいました。
頭では理解しているつもりだけど、日々そこまで“攻め”の姿勢で本気になれていないことが多いな…と、阿部さんの仕事ぶりをテレビで観ながら自分自身を見つめ直すきっかけにもなりました。
やるべきことだけじゃない、やったほうがいいことは全部やる。
コンシェルジュデスクは、ときに緊張がはしる出来事もあります。
今日午後の便でアメリカに戻るお客さまからパスポート紛失の連絡があったというシーン。
まずは訪れた場所に電話してすぐに探してもらえるよう手配し、そこから折り返しの連絡があったときに確実に電話を受けるための体制を整え、お客さまにタクシーのレシートを探してもらい、もしそれが見つからなかったときのためにホテルのエントランスのカメラでどこのタクシーに乗ったかを確認する準備。
パスポートは見つかりましたが本人が取りに行かなくてはいけないので、お客さまがホテルに戻ってくるまでにその場所までのタクシーの手配し、その場所についてから迷わないよう詳細を示した地図と、英語しか話せなくても問題のないよう日本語のメモも用意。そして、戻ってきてから空港に向かうバスの時間の変更手配まで。
「把握しております。絶対に間に合わせますので、どうかご心配なさらずに。」
異国の地でパスポートを紛失してしまい、日本語も話せない、帰りの便の時間はどんどん迫ってる。お客さまは絶対に不安だったはずです。
そんななかこんな言葉をかけてもらえたら涙が出るほど安心すると思います。
その方の気持ちを思うとなんだか泣けました。
阿部さんは、「普通のサービスをしようとは思ってない。最善の一番いいサービスを提供する。やるべきことだけじゃない、やったほうがいいことは全部やる。」と。なんてかっこいいんだろう。
わたしが1番感動したのは、お客さまが戻ってきてからの阿部さんの対応で、テレビスタッフの「お見送りはしないのですか?」の声に「行きません。しつこすぎるので。」と答えた阿部さん。
その阿部さんの選択は、帰ってきたお客さまによかったですねと声をかけたときの表情や反応を見て、きっとそのお客さまの心を読み取ったからだと感じました。
パスポートを紛失してしまった女性は、無事にパスポートは見つかったけど、ホテルに戻ってきてからも動揺して焦って落ち込んだ気持ちを回復できていないように見えました。パートナーに優しく励まされている状態。
もしあの女性が「もう本当によかった!!あー危なかったわ!!」と、このことを笑い飛ばしている様子だったら、きっと阿部さんは笑顔でお見送りに行ったと思います。
だけどそうではなかったから、お見送りに行ったら彼女にその気持ちを引きずらせてしまうと考えたのかな、と。
そこに関しては特にテレビでは触れていなかったので、わたしの想像です。
何でもそうかもしれませんが、接客は突き詰めればセンスだと思っています。
究極レベルになると経験値や努力では越えられない壁があると思っていて、こういう場面で相手の心情をいかに読み解き、相手にとって今自分ができるベストな対応は何か、どうすれば相手の気持ちをいちばん良い状態に持っていってあげられるか、そういうことが感覚的にわかるのはもはや才能だと思います。
“攻め”のおもてなし
阿部さんが、まだコンシェルジュを始めたばかりの頃の話です。
あるお客さまに「東京までいくからタクシーを頼む。」と依頼され「電車のほうが安いですよ。」とご案内したところ「お前は俺に金のことを言うのか。」とお叱りを受けたことがあるそう。
あるお客さまには「あなたがいくようなレストランを紹介してほしい。」と言われ、ツウなお店を紹介したところ「もっと有名なお店がよかった…。」と不満顔で戻ってこられたこともあったそうです。
どうしたら確実に満足に導けるのか、お客さまのほうが理不尽なんだと思ったこともあったけど、他にもやりようはあったはずで、そのたびに悔しいとおっしゃっていました。
「少なくともお客様にとっての一番いいものをだせなかったのはわたし。一番いいものがあったわけですよ、お客さまには。そこに正解はある。」と話す阿部さんが印象的でした。
阿部さんは、“攻め”のおもてなしが大切だ、と。
手配力や的確に満足させる安心感、どんな依頼にも対応できることは大前提で、さらにもっと踏み込んだ接客を。
相手に思いを尽くしても通じるとは限らない、そつなく対応すれば問題はおこらない、だけどプロとしてそこにいる意味とはなにかを考える。
自分に対してさぼらない、自分の気持ちの部分で手を抜かない、この思いを持つことは教えられてできることじゃない、自分でやったことのないことやって試したことのないこと試して、自分でそういうことをしていかない限りそうはなれないと。
その言葉を聞いて思い出したことがあります。
わたしが某ホテルでクローク研修をしていた頃の話になりますが、エントランス付近のクロークに立っていたとき、入口から入ってきて目の前を通りすぎるお客さまに「いらっしゃいませ。」とお声がけしたところ「おかえりなさいませだろ!!」と怒鳴られたことがありました。
とても怖くて、その場では「申し訳ありません。おかえりなさいませ。」と小さな声を絞り出すのがやっとで、すぐにそのことを上司に報告すると、その方は常連のお客さまだということがわかりました。
正直、研修で来て数日もたたないのに、何十名もいる常連さまの顔と名前を一致させるなんて無理、むしろそんなことで怒鳴るなんてどうかしてると思いました。
ですが、よくよく考えてみると、そのお客さまがなぜ数あるホテルのなかからわざわざそのホテルを選んでいるのか、きっと他にはない居心地の良さを感じているからで、わたしはその気持ちを台無しにしてしまったんだな…と思うように。
後日、そのお客さまがまた目の前を通り過ぎようとしたときに、一瞬目があったんですね。
あ…!って思って、無難に「おかりなさいませ。」と声をかけるだけにしようか一瞬迷ったけれど、勇気を出してカウンターから出て駆け寄り「〇〇から研修できている〇〇と申します。ご挨拶ができないまま先日は本当に申し訳ありませんでした。2か月の間ではありますが、どうぞよろしくお願いいたします。」とご挨拶をしました。
すると気持ちが通じたのかそのお客さまが笑顔を見せてくださって、それから通りかかるたびに話しかけてくださるように。
もしあのときわたしが無難な対応をしていたら、お客さまの気持ちは現状以下だったと思います。
また別のある日、お客さまに「このお花はなんて言うの?」と聞かれたことがありました。
クロークデスクには毎週お花が生けられていて、そのお花について質問されたのですが、お花は好きだけれどお花の種類についてはほとんど知識がなく、わたしは答えられなかったんです。
お客さまは笑って「いいのよ。」と言って去っていかれましたが、あまりにも悔しくて、それから毎週お花の先生に今回はどんなお花なのか、どうしてそのお花を選んだのかを聞き、自分で花言葉も調べるようにしました。
結局その後そのお客さまとお会いすることはありませんでしたが、他のお客さまが「お花がきれいね~。」と何気なくつぶやかれたときに、お花の先生から聞いエピソードを披露することができました。
お客さまがそれを聞いて笑顔を見せてくれたことが嬉しくて、接客の楽しさを知りました。
踏み込まなければ踏み込まないで問題はない状況でも、相手の気持ちを想像して、どうしたら相手にもっと喜んでもらえるか考えて実行するのがおもてなしだと思います。
阿部さんがテレビのなかで「コンシェルジュとして一番大切なのは、人の気持ちを読み取ろう感じ取ろう、それをどうかなえるか、かなえることが自分がうれしい、この人が喜んだらそれが単純に自分がうれしいという、それがまず最初にあるはずなのね、それを持続できるかっていうことだと思うんですよ。」とおっしゃっていましたが、本当にその通りだと感じました。
プロフェッショナルとは?コンシェルジュとは?
プロフェッショナルとは? — 「ひとつのことに関して、昨日より今日、今日より明日、もっと前に進もう、もっと先を目指そうという努力をいつも自然に楽しんでいる人。」
コンシェルジュとは? — 「わたしの趣味です。」
阿部さんのその答えに深く共感しました。
努力をいつも自然に楽しんでいる人というのは、先を目指して行動していくことが楽しくて楽しくて仕方がなくて、その結果気がついたら成長していたいうイメージです。
まずは、目の前のことを全力でやることが大切だと思います。
久しぶりに長文のブログになってしまいましたが、すごく胸が熱くなったので、その気持ちを残しておきたくてブログに書きました。
このブログを書くために録画をもう一度観たのですが、気持ちが高まりすぎてまた興奮してきた…!笑
すっかり阿部さんのファンです。
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